Storyストーリー
広島県の西部、瀬戸内海島嶼部に位置する江田島市。そこで生まれ、これまで一度も島から出る事なく生きてきた修司(三浦貴大)は数年前、家の畑で父親が突然死した事にずっと責任を感じ、それからはずっと、うだつの上がらない生活を送っていた。そんなある日、江田島から東京に出て映画監督として活躍している幼馴染みの和也(武田航平)が、故郷の江田島を舞台に映画を撮る事をテレビで知る。和也は高校時代、修司が思いを寄せていた同級生の幸恵(咲妃みゆ)と付き合っていたこともあり、余計に遠い関係だった。その頃、幸恵は呉市のスナックで働いていた。定期的に江田島に戻り実家の母親の面倒を見ている幸恵には江田島で水産会社を営む交際相手がいて、妻子あるその相手との交際は決して幸せなものではなかった。3人の思いが交錯する中、和也が監督する映画の撮影がスタートする。それは亡くなった母が遺した、ある願いを叶えるためでもあった……。
広島県江田島市
Castキャスト
Staffスタッフ
監督・脚本:沖 正人
1975年生まれ。広島県江田島市出身。大阪のミヤコ蝶々一座にて約3年間、芝居と作品作りの基礎を学ぶ。 1996年に上京し、俳優・プロデューサーとして多くの映像作品に携わる。2016年、映像ディレクター海老澤憲一と共同監督ユニット〈コーエンジ・ブラザーズ〉を結成。 初監督作『BOURBON TALK』が国内外の映画祭で高い評価を受け、オムニバス映画『愛と、酒場と、音楽と』の一編として劇場公開された。2018年、長編映画『お口の濃い人』が函館港イルミナシオン映画祭でグランプリを受賞。その後、同作は劇場公開された。コーエンジ・ブラザーズ活動休止以降は沖正人として、2020年に制作費ゼロ、撮影1日で完成させた短編『ある役者達の風景』がNHK「おはよう日本」や週刊新潮などで話題となり、その後長編化され2022年より全国劇場公開された。2023年には、自ら企画したオムニバス映画『THEATERS』が全国のミニシアターで公開された。なお、函館港イルミナシオン映画祭では、『お口の濃い人』『ある役者達の風景』『THEATERS』の3作品でオーディエンスアワード・グランプリを受賞し、史上初の快挙を成し遂げている。
~沖監督 映画への想い~ 故郷と映画の間で
広島の江田島と呉で映画を撮りました。江田島は私の出身地であり、呉は青春時代を過ごした場所です。正直なところ、地元で映画を撮ることには、長く照れくささがありました。ですが、2018年に母を亡くしてから、故郷との距離感が変わったように思います。帰る場所がぼんやりしていく中で、自分にとってこの地とどう関わっていくかを改めて考えました。そして出したひとつの答えが、「ここで映画を撮る」ことでした。広島を舞台にした映画には、原爆や戦争、あるいはヤクザといった強いテーマが多くあります。もちろん、それらを描くことは重要な意味を持ちます。けれど、それだけで語られてしまう広島には、どこか偏った印象も感じていました。この映画では、島を出た人、島に残った人、そして事情があって島を行き来する人という、三人の視点から江田島という場所を描いています。同じ土地でも、人によって見える風景は違います。そんな多様な姿を、丁寧にすくい取りたかったのです。撮り終えてみて、改めてここが私にとっての「始まりの場所」だったのだと実感しています。映画を通じて、その空気や温度のようなものが、少しでも伝われば嬉しく思います。

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音楽:小山絵里奈
初めて作った「Dance with Tarantula」が坂本龍一の耳に止まり、2007年、坂本エグゼクティブプロデュース、ミニアルバム『INLY』でアーティストデビュー。映画、ドラマ等の音楽も多数手掛ける。劇伴担当作に、映画「BISHU ~世界でいちばん優しい服~」(24)、「九龍ジェネリックロマンス」(25)ドラマ「昔はおれと同い年だった田中さんとの友情」(24)、「マイダイアリー」(24)等がある。
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脚本:鈴木太一
1976年生まれ、東京都葛飾区出身。ENBUゼミナールで映画制作を学ぶ。2012年監督脚本作『くそガキの告白』劇場映画デビュー。他の監督作品に『生きててよかった』(22)、テレビドラマ『みんな!エスパーだよ!』(13)、『PANIC IN』(15)、オムニバス映画『THEATERS』(23)、キネカ大森先付けショートムービー『もぎりさん』(2019)、脚本参加作品に映画『僕の月はきたない』(24)、テレビドラマ『豆腐プロレス』(17)、『ナンバMG5』(22)など。最新作『みんな笑え』(25)全国順次公開中。
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撮影:彦坂みさき
愛知県出身 日本大学芸術学部映画学科卒業。主な作品に『Ribbon』(21/のん監督)、『雨降って、ジ・エンド』(20/高橋泉監督)、『プリズン13』(19/渡辺謙作監督)、NHK BS 藤子・F・不二雄SF短編ドラマ『おれ、夕子』(山戸結希監督)、Hulu・NTVドラマ『私をもらって』の他、ドレスコーズMV『襲撃』(山戸結希監督)など。
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照明:金子秀樹
1977年生まれ、滋賀県出身。主な作品に『祭りの後は祭りの前』(19/塚本連平監督)、『雨降って、ジ・エンド。』(20/高橋泉監督)、『犬部』(21/篠原哲雄監督)、『ひみつのなっちゃん。』(23/田中和次朗監督)、『ハピネス』(24/篠原哲雄監督)、『となりの宇宙人』(25/小関裕次郎監督)など。
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録音:庄司寿之
1991年生まれ。日本映画学校卒業。映画や配信作品を中心に、録音助手として「461個のおべんとう」(20/兼重淳監督)、「ハウ」(22/監督:犬童一心)、「映画刀剣乱舞–黎明–」(23/監督:耶雲哉治)、「極悪女王」(24/監督:白石和彌、茂木克仁)、「さよならのつづき」(24/監督:黒崎博)、「宝島」(25/監督:大友啓史)などに参加。今作で劇場公開作品の録音技師を初めて担当する。サウンドデザインユルタ所属。
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主題歌:超☆社会的サンダル
オニザワマシロを中心に2021年3月に「反社会的サンダル」を結成。2022年4月「超☆社会的サンダル」へバンド名を改名。2025年4月 全国5カ所で対バンツアー、東京では初ワンマンライブを新宿LOFTで開催し、チケットは全公演完売。「おとなになったら」は、10月8日(水)にリリースされる新作EP『う、ちゅー。』に収録予定。リリースに伴い全国7箇所を巡るツアーも開催が決定している。

Theater劇場情報
| 都道府県 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | ヒューマントラストシネマ渋谷 | 03-5468-5551 | 公開中 | |
| 広島県 | 呉ポポロシアター | 0823-21-5903 | 公開中 | |
| 北海道 | サツゲキ | 011-221-3802 | 11月14日(金) | |
| 秋田県 | 御成座 | 0186-59-4974 | 12月12日(金) | ※12月12日(金)-14(日) 舞台挨拶あり |
| 神奈川県 | あつぎのえいがかんkiki | 046-240-0600 | 11月14日(金) | |
| 神奈川県 | 横浜シネマリン | 045-341-3180 | 11月22日(土) | ※11月22日(土)、23日(日)舞台挨拶あり |
| 栃木県 | 小山シネマロブレ | 050-3196-9000 | 11月7日(金) | |
| 栃木県 | 宇都宮ヒカリ座 | 11月14日(金) | ||
| 群馬県 | シネマテークたかさき | 027-325-1744 | 近日公開 | |
| 長野県 | 上田映劇 | 0268-22-0269 | 12月5日(木) | |
| 静岡県 | シネマイーラ | 053-489-5539 | 12月26日(金) | |
| 愛知県 | シネマスコーレ | 052-452-6036 | 近日公開 | |
| 京都府 | アップリンク京都 | 075-600-7890 | 11月14日(金) | |
| 京都府 | イオンシネマ京都桂川 | 075-925-0075 | 上映終了 | |
| 大阪府 | イオンシネマ四條畷 | 072-863-1166 | 上映終了 | |
| 大阪府 | テアトル梅田 | 06-6440-5930 | 11月14日(金) | |
| 岡山県 | シネマクレール | 086-231-0019 | 11月7日(金) | ※11月9日(日)16:15~上映後舞台挨拶 |
| 広島県 | 八丁座 | 082-546-1158 | 上映終了 |
|
| 広島県 | イオンシネマ広島西風新都 | 082-941-7070 | 上映終了 | |
| 広島県 | シネマ尾道 | 0848-24-8222 | 公開中 | ※11月1日(土)10:35~上映後舞台挨拶 |
| 山口県 | 萩ツインシネマ | 0838-21-5510 | 公開中 | ※11月7日(金)17:45~上映後舞台挨拶 |
| 佐賀県 | シアターエンヤ | 050-1871-1433 | 12月5日(金) | |
| 宮崎県 | 宮崎キネマ館 | 0985-28-1162 | 公開中 |








commentsコメント
出演者コメント
修司を演じるにあたって、今回は多くの努力を必要としませんでした。
幼馴染の二人、和也と幸恵を演じた武田さん、咲妃さん。
江田島の風景や肌で感じる雰囲気。
そういったものに助けられ、修司という人物像が自然と形作られた気がします。
特に幼馴染の二人は不思議なことに、本当に昔からの友達であるかのように感じていました。
あとは、沖監督と、脚本に身を委ねるのみでした。
この作品での多くの出会いは、私にとっての宝物です。
私は文章を書くのが苦手で、すべての思いを伝えるのが難しいのですが、
是非映画を見て、江田島の風を感じていただければと思います。
故郷を振り返る事はありますか?
それは場所だけでなく、心の故郷も含めて。
この映画は『あの時』には気づけなかった故郷の清らかさ、尊さ、儚さ、無形の財産と向き合える作品です。
和也と修司という現在対極にいる親友同士が、それぞれ違う角度から故郷を表現し、心の会話を進めていく姿があまりにもエモーショナルです。
江田島や呉の素晴らしい海と暖かな方々に支えらて撮影に挑みました。
三浦くんの圧倒的体現力と俳優力
咲妃さんの憂い帯びた可憐な儚さ
沖監督の故郷へのあまりにも強い情熱
携わってくださった方々の愛が詰まっています。
ぜひ、劇場でそれぞれの故郷と向き合って頂けたら幸いです。
呉や江田島は不思議と心が落ち着く場所でした。私の故郷とどこか通ずるものを感じたからだと思います。暑い時期の撮影には数々の困難が立ちはだかりましたが、故郷を想う沖監督の大きな愛とスタッフの方々や共演者の方々の熱意が強く結びついた先に、人や自然の尊さを感じられる素敵な映画が誕生したことを幸せに思います。三浦さん、武田さんとは今回が初共演だったのですが、人見知りであるはずの私が最初から自然体で居られたことに自分でも驚きました。幸恵役を追究できたのはお二人のおかげと深く感謝しております。どうかこの作品が、ご覧くださる方々を優しさでそっと包むことができますように…。
オピニオンコメント
“がんばれ”というシンプルでベタな励ましから、
物語が活気づき、加速していく感覚が
素直に感動に誘ってくれました。
過去を振り切った先にあるもの-
誰もそれがわからないから不安であるし、
だからこそ無限の可能性を秘めている!
故郷を想う‥‥。沖監督の江田島への愛が溢れていて、その想いがキラキラと輝きに満ちた映像美になり、その美しさの中に、幼なじみの三人の切なくも優しい過去と現在が行き来する!
フィクション映画を観ているような、ドキュメンタリーを観ているような?(笑)
見終わったあと、心の浄化が出来たような爽快感に包まれました。
映画監督には一生に一度しか撮れない作品があると思っている。それは処女作かもしれないし最高傑作かもしれないし人によって違う。でも、もう二度と撮れない、その一本があるから映画監督という人生を進み続けることができる、そういう決定的な作品が、たしかにある。この作品は、まさしくその決定的な強度のある傑作だった。どれだけの努力をしたか、どれだけの時間を使い、どれだけの壁にぶつかり想いを研ぎ澄ませて注ぎ込んできたか。いわゆるウェルメイドな大人の青春ドラマだが、その想いの強度はジャンルの枠を大きくはみ出してスクリーンに溢れていた。久々に会った沖さんは、充実した顔をしていた。日々を映画監督として生きているエネルギーが表情に出ていたとてもいい、顔だった。
心に残る青春・恋愛映画にはいくつかの共通点がある。
男が二人、マドンナの存在、舞台は海、そしてセンチメンタルなエンディングだ。『冒険者たち』がそうであり、『去年の夏』や『夕なぎ』もそれに近い。沖正人監督の『やがて海になる』もそうなのだ。人はすぎた青春や恋愛のかけらを心のどこかに残しているから、こういう映画に引かれるのである。
とても優しい映画でした。それなりに年を重ねた登場人物の思いがこんなにもピュアに伝わってくる映画も珍しいと思います。
きっと監督のお人柄がそのまま作品に反映されてるのでしょう、人の心の動きも海や山の風景も、とにかく優しさを感じます。出演者も自然にそこに生きていて誰も違和感を感じさせないのも素敵でした。ある場面では、いつの間にか涙が流れてました。ただ不器用に応援したい気持ちを相手に伝えただけなのに。見終わったあと故郷に帰りたくなると思います。とても優しくなれる映画でした。
故郷は「青春」を内包し、時間と共に熟成する。
三浦貴大がその熟成に苦しむ姿を、見事に演じる。
美しい瀬戸内海を見て育った、同じ広島生まれの身として、故郷で私小説的映画を完成させた沖正人監督に…嫉妬を覚えた。
映画は「ものがたり」が大切だが、それは「ストーリー」ではなく「ストーリーテリング」のこと。「物語」ではなく「物語り」。本作は普遍的なお噺を映画でしかあり得ない「物語り」で描くのが心地よく。鮮烈で映画魔術的な1ショットが多幸感に満ちていました。
それはまるで広島県江田島の海のように。
終始、穏やかだ。登場人物の誰もが心の中のわだかまりと葛藤しているけれど、静かに真剣にそれと向き合っている。みんなそれぞれの毎日を生きていて、その等身大の暮らしが無理なく描かれているところが素敵。過剰な演出、一切なし。沖監督の作品を見ると、いつもホッとする。